Written by まろにー

翔くんの生い立ちから現在、そして刺青と人生の覚悟

Interview

今回は翔くんとの初インタビューということで、未だ知ることのなかった彼の生い立ちや「刺青を入れたい」と思った経緯とその理由について、なるべく慎重に深いところまで聞き出していくことにした。

それは単に刺青をたくさん入れている人物という側面だけを見て感じた好奇心という類のものではなく、 翔くん(@shooo_kun)という人間が、私が抱いていた『刺青(tattoo)を入れている日本人』に対する印象を大きく変えてくれた人物でもあったからだ。

翔くんとのインタビューを通して、私が一番印象に残っている言葉は『自分を凄く好きになれた』という一言。

決して表面的な意味合いだけではないということを、このインタビューの中で感じていただけたら嬉しく思う。

第1章:翔くん(@shooo_kun) の小学生時代から中学生時代

Q翔くんは子どもの頃(小学生~中学生時代)どんな感じだったんですか?

A:かなり大人しい性格で、どちらかと言うと暗い感じでしたね。僕は子どもの頃の記憶ってあんまりないんですけど、小学校に入る前には両親が離婚していて、お母さんが苦労して育ててくれたっていうのはやっぱり覚えていますね。

Q離婚されたのはもの心つく前なんですね。ちなみに、ご兄弟はいらっしゃるんですか?

A:僕の2つ下に妹がいます。だから、母と僕と妹の3人家族で暮らしてきました。母が苦労して育ててくれたのを見ていたせいか、反抗期とかもなかったんですよね。

親が離婚したせいで、グレたり反発心を抱いたりする人も多いって聞きますが、僕の場合は逆にそういうことをしたいと思わなかったっていうか、迷惑をかけたくなかったんですよね。

中学生くらいまではそんな感じで、中学生の頃は野球部に入ってたんですけど、途中から自分は走るのが好きだってことに気づいて駅伝部に変更したんですよ。

「子どもの頃は大人しかった」と話す裏側で、両親の離婚を経験

翔くんの子どもの頃のエピソードをお伺いしていく中で、突然あらわれた「両親の離婚」というワード。

この言葉を聞いた時に、私が彼に対して抱いていたギャップのような、違和感のように感じていたような部分(つまり、彼の外見がもたらす印象と本人の性格の不一致について)が全て取り払われ、彼の本質のような部分がなんとなく理解できたような気がした。

小学生になるより前に、すでにご両親は離婚されていたということで「父親のことは、記憶にもほとんど残っていない」と放つ彼の言葉の中には、でもほんの少しの悲しさが残っているように感じられた。

それは彼自身も気づいていないような微細な感情かも知れないけれど、でもそれは確実に現在の翔くんという人物をカタチ作ってきた核心のようなものに触れたような気がした。

かく言う私も、似たような生い立ちを経験してきた過去があり、それは同士だけが直感的に理解できる抽象的だけれど確実な『何か』であり、彼が成長していく中で培ってきた強さの根源なんだと思った。

第2章:高校進学、そして車・バイクとの出逢い

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子どもの頃から大人しい性格だったと話す翔くん、それは彼の本質の部分であり、またコンプレックスのような側面もあったらしい。

内気な性格を変えるために、少しずつ自分の殻を破っていく方法を模索しながら見つけた車やバイクとの出逢い。

Q中学校で途中から駅伝部に入られたということですが、高校生の頃はどうだったんですか?

A:中学生の頃に走ることが好きって気づいて、その流れで駅伝が強い高校へ推薦入学することができたんです。

ただ、その部活があまりにも厳しすぎて途中で「あ、これはムリだな…」って気づいてしまって、1年生の2学期には辞めてしまったんですよね‥

でもここから、やっと新しい自分が生まれ始めたんですよ。結果的に、それが凄く良かったと思っていて。

もともと車とバイクがスゴく好きだったんですけど、高校生の頃に部活を辞めたことをキッカケにそっちの方に完全にハマっていきましたね。

その当時の友人たちとは、今でもまだ繋がりがありますし、バイクのためにバイトしたりとか、たくさん友人ができたり、とても楽しい高校生活を送ることができました。

第3章:高校卒業を機に関西(滋賀県)へ

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Qもともと地元は四国でしたよね?関西へはどうして来ようと思われたんですか?

A:僕は、もともと高知県出身なんですけど、やっぱり車が好きだったんでそういう関係の仕事に就きたいなって思って、高校卒業後に滋賀県へ出てきました。

京都へ来る前までは、ずっとその車工場で働いていたんですよ。実はそこで今の僕に繋がるような出逢いがあったんです。

工場で一緒に働いていた同期の中に、ボディピアスを入れている人がいたんです。指1本通るかなっていうくらいの大きさでしたけど、初めてボディピアスを見て「めっちゃカッコいいな」って思って。まだ19歳ぐらいの頃でしたね。

Qまずピアスからだったんですね。

A:ハイ、でもボディピアスと刺青ってわりと似たような属性というか密接に絡んでくるので、刺青への興味もホントに自然な流れではありましたね。

Qじゃあ、ピアスのゲージを育てていくのも刺青も同時進行って感じだったんですか?

A:そうですね、どっちも並行して育てていきました。最近やっと、ピアスもタトゥーも完成したんですよ。

3.11をキッカケに刺青(tattoo/タトゥー)を入れる覚悟をした

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とは言え、もともと翔くんだって刺青(tattoo/タトゥー)を入れることについて全く抵抗がなかったワケではないらしい。

彼がその決意を果たした経緯には、3.11『東日本大震災』が大きく影響していたようだ。その当時はまだ車工場で働いていた時期で、すでにピアスは入れていたものの、刺青を入れることについては覚悟しきれていなかったと言う。

そして、2011年3月11日その日はあまりに唐突に、何の前触れもなくやってきた。

この日を境に、実際に震災や津波によって家族を失ったり家や職場を失ってしまったという人も多いだろう。

そしてそれ以上に、ただ傍観者でしかいられなかった筈の我々の価値観もまた、確実に大きく変化していった。

いろんな『当たり前』だったことが信じられなくなってしまったり、それらが幻想だったのかも知れないということをにわかに受け入れていく他はなかったと思う。

翔くんという、ただの純粋な青年もまた、その一人だったということ。その先に、ただ現在の彼の姿があるということ。

私たちと同じように、この震災を傍観者として経験しながらもやはり大きなショックを感じた翔くんが思ったこと。それは「たった1度きりの人生なんだから、好きなように生きよう」という決意にも似た確信だった。

これを機に、ずっと迷っていた刺青を入れるという覚悟を決めたらしい。

そしてそれと同時に「この人生で、自分がしたいと思ったことは全てやりきる」と決めたんだそう。

第4章:京都進出、そして『結婚願望』について

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車工場で務める中で、自分の価値観や外見までをも徐々に変化させていった翔くん。ピアスや刺青を育てながら出逢ってきた人々が、本当に大好きだったと言う。

「みんな本当に子どものように純粋な人たちばっかりで、目をキラキラ輝かせていて、怖い世界とかでは全くなかったですね」

その出逢いの中で、これまでの自分を勇気づけて自信を与えてくれていた車やバイクを手放すこともできたんだそう。

そういった代名詞がなくても、自分の体ひとつで生きていけるということがわかり、たくさんの人と繋がることができると知って、確実に自信に繋がっていったのだと言う。

大切にしていた車やバイクを手放しピアスやタトゥーの世界へ移行していった人生の転換期の中で、車工場を辞めて京都へ引っ越すことも決意した。現在は京都に住んでちょうど4年ほどになるという。

Q現時点でタトゥーもピアスも完成されたということですが、他にも目標とか「やってみたいこと」って何かありますか?

A:…そうですね、実は僕こんな見た目で言うのもなんですけど『結婚願望』があるんですよね。なぜか、子どもの頃からずっと「温かい家庭を築いていきたい」っていう風に思っていて、親が離婚してしまったせいか、そこに対してスゴく憧れがあったというか。

Qそうだったんですね、たしかに意外ですが見た目とかは関係ないですよ。とてもステキな目標だと思います。

A:僕は長男だからか、昔からずっと結婚して子どもを作って母親に見せてあげたいなぁって凄く思っていたんですよね。ずっと苦労して育ててくれたお母さんに孫の顔を見せてあげたいなぁって。

実は最近、僕の2つ下の妹が出産したんです。僕がやったことじゃないのに、なんだかとても達成感があるんです。「よくやってくれたなぁ」みたいな。

姪っ子に当たるんですけど、まだ会ったことがないので楽しみにしています。僕自身がまだできていないけど、それでも本当に自分のことのように嬉しくて。

【まとめ】翔くんの生い立ちから現在、そして刺青と人生の覚悟

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最終的な目標として、奇を衒うことなく「結婚したい」と語ってくれた翔くん。子どもの頃から一貫して、彼の想いは純粋で家庭的であり、そして誰に対しても誠実に振る舞う彼の本質を理解できたような気がした。

そしてインタビューも終盤にさしかかった頃、相変わらず目をキラキラ輝かせながら「最後にこれだけは言わせてください」といたずらな表情を浮かべながら付け足してくれた。

「僕は、刺青を入れたことについて全く後悔していません。毎日鏡の前に立って、カッコいいなぁって惚れ惚れして見ているぐらい」

確かに日本的な概念で捉えると、どうしてもデメリットばかりが目についてしまいがちだけれど、彼のように確信に満ちた覚悟を持って刺青を心から愛している人にとっては、デメリット以上の喜びがあるのだろうと思った。

『やっと子どもの頃の自分から卒業して、自分を凄く好きになれた』と本当に嬉しそうに話してくれた。

冒頭でもお伝えしたこの言葉。

小学生の頃、きっと誰よりも優しくて心細かった筈の純粋無垢な小さな翔くんに、そっと伝えてあげたいと思った。きっと誰よりも喜ぶんだろうなと想像する。